読書ノート007 「最高の脳で働く方法」

 今回は「最高の脳で働く方法 Your Brain at Work」(デイビッド・ロック著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)について書かせていただきます。

 

1.本書を手にとった動機

 

 自分の脳の機能を上手に使えているでしょうか?誰もが脳を四六時中使っているわけですが、特にそれを意識することは少ないでしょう。脳は自然に働いてくれてはいます。でも自然に任せっきりだと最高の状態では働けていない場合も多いのです。
 
 今回は「最高の脳で働く方法 Your Brain at Work」の感想を書いていきたいと思います。以前、「Brain Driven」という本の感想を書かせていただきましたが、内容としてはそれとにた系統になります。
 
 「Brain Driven」の方は、脳の中で何(What)が起こっているのか、なぜそうなるのか(Why)を科学的に解説するスタイルでしたが、「最高の脳で働く方法」は、ある夫婦の仕事風景を例に出し、比喩表現などを使いながら、読者に身近に感じられるような書き方をしているように思われます。
 
 興味のある方はどちらかお好みの方を読んでみてもいいと思います。私は両方読みましたが、似たような内容が書かれた別の本を読んで見ると、「これはあっちの本でも書かれていたアレのことを言っているな」というような気づきも得られ、理解を深めることもできるかと思います。
 

2.得られた気付き

2.1.演出家

 本書では、脳の中で起こることを舞台の比喩で表しています。役者は意識を向ける情報、観客は記憶や習慣などの無意識下の脳内情報を表し、特に重要な役割として登場する演出家は脳の反応の仕方を判断したり、どの役者を舞台に上げるか、舞台から下げるかを決めたりと、客観的に観察してコントロールするような位置づけです。
 
 多くの場面で、この演出家を働かせることがプラスに作用します。
 
 例えば、なにか一つのことに集中したい、と思ったとき、どうやって集中するか、ではなく、どうやって他に注意が向くのを抑えるか、というのがポイントとなるのです。
 
 脳が長時間集中し続けられないのは自然なことであり、集中しようと思ったからと言ってできるものではないのです。だから、他に注意が向きそうになったことに気づき、すっともとに戻す、という考え方のほうが適切なのです。自分の注意が他に向きそうになったことに気づくこと、それをコントロールすること、これらが演出家の役割です。
 
 自分の内面に注意を向けるという、マインドフルネスやメタ認知と似た概念だと思います。他の書籍でも言われているように、マインドフルネスやメタ認知能力を鍛えることの重要性を再認識させてくれます。
 

2.2.脅威を和らげる

 
 脳は脅威を感じると、集中した思考や冷静な判断をするのが難しくなります。脳はステータス、確実性、自律性、つながり、公平性(本書では、英語の頭文字を撮ってSCARFとよんでいます。)のいずれかが脅かされることを脅威と感じます。逆に言えば、これらが満たされれば報酬と感じるのです。
 
 例えば、企業でよくある上司からのフィードバックですが、これは部下にとって脅威となりがちです。そもそも上司と部下という立場の差自体が、ステータスを脅かすことになります。また、フィードバックというのは、基本的に部下の弱点を指摘することになりますので、これもステータスを脅かす脅威です。言い方に注意を払うことも重要ですが、それでもフィードバックという構図自体が多かれ少なかれ、部下には脅威を感じさせてしまうものなのです。この状態でフィードバックを行ってもいい方向に向かいにくいわけです。
 
 そのため、まずは本人の不安を和らげることが重要となります。勇気づけることでステータスの感覚を高める、課題を明確にすることによって確実性の感覚を高める、本人が判断してアイデアを出せるようにすることで自律性の感覚を高める、などです。
 
 これは、前回記事に書きました心理的安全状態を作る重要性と同じことをいっていますが、本書ではそのためにステータス、確実性、自律性、つながり、公平性(SCARF)の観点が重要であることに気づかせてくれました。
 
 

3.アクション

 
 「Brain Driven」で書いたことと重複しますが、やはりポイントはマインドフルネス、メタ認知の能力を鍛え、自分の内面に目を向ける訓練をすることだと思います。ですので、瞑想の習慣を継続したいと改めて感じました。
 
 また、本書では必ずしも瞑想でなくても、直接的な感覚に意識を集中する練習をすれば良い、と述べられています。食事をするときにテレビやYoutubeをつけないで味覚に集中する、散歩をするときに音楽を聞かずに足の感覚や周囲の景色に集中するなど、そういうことでもいいのです。(最も、そういうことを食事瞑想や歩行瞑想というように、瞑想の一種と捉えることもあるようですが)
 
 現代では何かをしながら別のことも同時にする、というのが当たり前にできてしまう時代ですから、一つのことに集中する時間を意識的に作っていくことが重要なのだと思います。
 
 さて、読書ノートの第6回と第7回は似た系統の本の感想となりました。次回はちょっと趣の違う本について書いてみたいと思います。よろしければ引き続きお付き合いいただけますと幸いです。

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