読書ノート019 大事なことに集中する

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1 本書を手にとった動機

 成果を最大化する働き方=費やした時間×集中度
 
 どうせやるなら最大の効率でやりたいと思います。そのほうが、大きな成果を出すことも、短時間で必要なことを終わらせて余暇を楽しむこともできます。そのためには、気が散るものに注意を奪われず、大事なことに集中することが重要だと思います。とはいえ、気が散るものが多い現代で、大事なことに集中することはなかなか難しいのが実情です。そんな私は、「大事なことに集中する 気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法」(カル・ニューポート)にヒントを求めて読んでみました。
 

2 得られた気付き

 本書では、「ディープ・ワーク」の重要性と、それを実行するための戦略が述べられています。
 
 「ディープ・ワーク」とは著者が作った言葉で、認識能力を限界まで高める、注意散漫のない集中した状態でなされる職業上の活動、と定義されています。歴史上で影響力のあった成果も、現代の優れた業績もディープ・ワークから生まれたといいます。
 

2.1.ディープ・ワークの重要性

 例えば、カール・ユング精神分析医)は、田舎に隠れ家を建て、時折そこにこもって思索や執筆に集中し、20世紀で最も影響力のある思想家と言われるようになりました。マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツも、年に二度「Thinking Week」を設け、引きこもって本を読んだり、大きな構想を練ったりしています。
 
 ほんの一部の例を挙げましたが、大きな成果の陰にはディープ・ワークがあるのです。特に、知的労働には重要なことです。私自身はもともと集中することの重要さを支持していますが、皆さんはどうお感じでしょうか?
 

2.2.シャロー・ワークがあふれる現代

 現代の知的労働者は、注意散漫で、長時間中断されないで思考することが必要なディープ・ワークをほとんど行うことができないといいます。それは別に怠けているわけではなくて、現代はディープ・ワークの反対の「シャロー・ワーク」でいっぱいだからです。
 
 代表的なのがたえず行われるメールのやり取りです。メールが来るたびに即座に読み、返信するのが当然になっていると、しょっちゅう思考が中断されます。
 
 そして、現代にディープ・ワークが必要な理由を二つ述べています。
 
 一つは、習得。急速に変化する現代では新しい、複雑なことを素早く習得することが不可欠になってきています。
 
 もう一つは、ありふれたものではない、有用なものを作り出す必要性が高まっていることです。世界中がネットワークで繋がっている今、消費者はどこにでもアクセス可能であり、ありふれたものでは不利になります。
 

2.3.ディープ・ワークの実践戦略

 本書では18個の戦略が記されていますが、ここではその中からほんの一部だけを紹介します。
 

2.3.1.「80対20の法則」を適用する

 多くの場合、結果の80%は、考えられる原因のわずか20%から生まれている。効果の高い20%の部分に時間を費やしたほうがいいということです。この法則は有名なので、聞いたことがある方もいると思いますが、実行できているかというと・・・
 
 私達は、(たとえ小さくても)何かしらのメリットがあれば、その取組をやめることが難しいと感じます。著者はこの「何らかのメリットがあればいい」という思考を捨てよといいます。
 
 そして「職人的方法」を勧めています。これは、大事なことに対するマイナスの影響を上回る、プラスの影響を与えることを選ぶ、ということです。たとえプラスの影響があったとしても、それは大事なことを犠牲にしているかもしれません。その両面を考えて選択せよというわけです。
 
 時間は有限、私達の集中力も有限です。本当に大事なことを見極めて、そこにリソースを投下しましょう!ただそのためには、「何が本当に大事なことなのか?」を見極めることが不可欠です。それが案外難しい。とはいえ、私達は何となく「何らかのメリットがあればいい」思考にハマっている恐れがあります。意識的に職人的方法で考え、癖をつけていくことは大事だなと思います。
 

2.3.2.無駄なシャロー・ワークに「ノー」と言う

 全てのシャロー・ワークをなくすことはできないし、そもそも私達の集中力は、1日の全てをディープ・ワークに充てられる程にはリッチではありません。シャロー・ワークをなくすのではなく、ディープ・ワークとシャロー・ワークの割合を決めてそれを守る事が重要です。多くの場合、それは30~50%になるといいます。その割合を守るためには、シャロー・ワークでいっぱいになりそうなプロジェクトに「ノー」と言わなければなりません。
 
 シャロー・ワークの割当量の決定には、上司との相談が不可欠です。あるプロジェクトに「ノー」と言い、ディープ・ワークに時間をとる戦略は、職場の了解がないとできません。自分がシャロー・ワークに費やしている時間の実績を測定し、上司と相談しましょう。
 
 というのが、本書の中での主張ですが、ディープ・ワークの重要性を理解している上司ばかりではないというのが現実かなと思います。それがよく理解されているのであれば、シャロー・ワークはすでにもっと減っているでしょう。メールやチャットにすぐ返信することを求めたり、とにかくいろんなプロジェクトに首を突っ込むことを良しとする人も多いと思います。私も昔、自分の仕事に集中するために他のことをあえて排除しようとすると、「好奇心がない」と言われ叱られたことがあります・・・ディープ・ワークで大きな実績を作らないと、納得してもらいづらいかもしれません。
 

3 TO DO

 大事なことに集中することの価値はよく理解できました。それを実行するための戦略も参考になりました。
 
 そもそも自分にとって大事なことって何なのか、ここが明らかにならないとどうにもならないなと思いました。そのためには、自己理解を深める必要があると思います。就活のときに何となくやった自己分析ではたりません。やはり現代は深く自分を知ることの価値がますます高まっているんだなと再認識しました。
 
 そして、「80対20の法則」。これはぜひとも適用したいと思います。そのためには、行っている取り組みの中で、何が重要な20%で何が残りの80%なのかを見極める必要があります。つまり、やっている取り組みと成果の関係を測定しなければなりません。頑張るのはいいけど、頑張った結果成果につながっているのか、それを測定する方法を考えながら取り組まないと、重要な20%を見極めることはできません。成果の測定ってあまり意識していませんでしたが、今後は結果を測り、振り返りながら、重要なことを見極めて、そこに集中していきたいと思います。